2016.10.06

●渡り鳥の季節到来●

本日もお立ち寄りありがとうございます。
 
 秋になると、渡り鳥が移動途中に事故にあって動物病院に運ばれてきます。

 先日は、翼の骨が折れたフクロウの一種が運ばれてきました。

 野鳥の骨折症例では、怪我をしてから、治療が行われるまでの迅速さが非常に重要です。

受傷から治療開始までの時間が長ければ長いほど、事態が悪化して、後遺症が残る可能性が高くなります。

 運ばれてきて、ぱっと見て、手遅れ という症例も少なくありません。

 今回のフクロウのように、長距離を移動する渡り鳥で、なおかつ狩りをするタイプの野鳥を野生に返す場合、後遺症がほとんどない状態を目指さなければなりません。

 いかなる時も、身体能力が万全でなければ、野生の世界では生き残れません。

 治療が不十分だったり、おおむね治ったものの後遺症が残ってしまった個体を野に放しても、天敵の餌食になるか、エサを採ることができずに飢えるか、長距離の移動ができずに途中で行き倒れるのは確実です。

 野鳥の骨折では、運よく治しやすい場所が折れていて、骨折後いちはやく治療ができて、うれしいことに術後の合併症が起きなかった場合にのみ、放野が可能となります。

 が!  今回。

 保護した方が、自宅にて数日、一生懸命に餌をやろうとして余計なお世話をした結果、骨折部位は十分にこじれ、飢餓状態によって体調は十二分に悪化し、もはや手術ができないレベルになっております。

 もうね。
 なんとうかね。
 野鳥は一般家庭では面倒みれませんから。
 頑張らなくていいからすぐに引き渡してください。

 手に負えなくなってはじめて丸投げしてくる人が多いですが、その段階だとこっちもお手上げです。

 なんでこんなことが起きてしまうのか。

 ごく普通の人々が、フクロウを身近なペットだと勘違いしてしまうような「フクロウが陳列されている施設」が、そこかしこにあるからだと思います。

 ここで はっきりさせておきたいことがあります。

 フクロウは身近な生き物なんかじゃありません。
 
 飼育下で何代も繁殖を続けてきたペット用のフクロウだったとしても、初心者がいきなり飼えるようなものではありません。

 ましてや、今ここにいるような、野生のフクロウなんぞは、一般家庭でどうこうできるシロモノではないのです。

 しかも骨折して、弱っているわけだし。

 そんなこんなで怒り心頭ですけどね。
 治療はちゃんとやりますよ。

 ヘロっヘロだったフクロウも ここ2日ばかり集中的に介護していたら、人に反撃する程度には回復してきたようです。

 ついさっき、16代目吉祥寺産ヒラタクワガタにはさまれて大出血したその穴に、ピンポイントでフクロウの爪が刺さってそのまま5分間、力強く握られました。

 抗生物質のんだほうがいいかな・・・・。

 写真は西表の夕暮れです。光芒を肴に泡盛を飲みたいものです。抗生物質とかぢゃなくて・・・。

      以上。三鷹・吉祥寺のペットドクター いのかしら公園動物病院の石橋でした。