2016.06.27

●秋刀魚の骨 外伝●

本日もお立ち寄りありがとうございます。

 あっついですねぇ。

 熱中症にご注意ください。

 さて。
 土曜日の閉院後、重たい体をひきずりつつ、おのぼりさん状態で新宿までいき、友人と新年会をしてきました。
 忘年会が流れ、新年会が流れ、じゃぁ新年度会だっ!君 うまいこと言うねぇ、って計画してみたものの、4月なんて仕事おわったらそのままダウンするから無理・・・・ 
 そんなこんなで、一年がちょうど半分すぎた土曜日の夜。蒸し暑い新宿の路地裏で、あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。とビールを酌み交わしたのであります。

 小鳥の話で盛り上がっていたときのこと。
 いきなり彼の背中から猛烈な殺気があふれかえりました。

 いえ・・そもそもわたくし、殺気なんてものの実物とは縁遠い人生をおくって来ましたからね。いまのが殺気だ!なんて言おうものなら、ちょっとした知ったかぶりですよ。ホンモノに遭遇したことないんだから。

 でも 今のって殺気ですよね? なんか 漫画でいったら ウゴゴゴゴゴとか、メラメラメラっとか グワシ! とか サバラ! ってな効果音が出てるくらいの感じだったし。

 はじめて感じましたよ。殺気ってやつを。

 いやもう、どんだけ初めてかっつったら「はじめての絵本シリーズ第13巻 はじめての殺気」くらいのはじめてさ加減だった。うん。

 過去に経験がないにもかかわらず・・・はっきりと殺気と自覚できる具体性をもって私の五感に飛び込んできたのが不思議。

 忍者とか出てくるドラマで 田村正和さんあたりが演じる達人が、ふと立ち止まり「気のせいか・・いまそこに殺気を感じたような気がしたが・・・」なんてなシーンがありますよね。あわてて水にもぐって気配を消した真田広之さんあたりが、田村正和さんが立ち去るのを確認して胸をなでおろしたりするヤツ(昭和なキャストでお送りしておりますが)。

 あれってほんとなのね。って実感できました。

 で、彼に、いったい何事かい?って聞いたら、なにやら隣の席の若者が大変なご無礼を働いたとのこと。私からは死角でよく見えなかったのですが、聞いてみたら、確かにご無礼な話でした。

 が!それにしても いまの殺気は何?? 
 こえ~なアンタ。何食べて育つとそんなことになるのさ。

 いやね・・・。聞いて驚きましたよ。
 殺気の出る食べ物を食べて育ったわけじゃないんだって。
 彼は、血気盛んな少年時代に、お灸をすえる目的で親に無理やり軍隊に入れられたんだそーですよ。
 日本だったらせいぜいお寺ですよね。
 軍隊って・・・ 単語の非日常性についていけない。

 軍隊に入れられた彼は、そこで猛訓練をうけ、さまざまな○×▽□(怖いので自主規制)なスキルを叩き込まれたんだそうです。もともと真面目な彼は、メキメキ頭角を現してしまい、その素質を高く評価され、最終的にとある特殊部隊に配備され、麻薬捜査官として、数々の犯罪者を○×▽□(怖すぎるから自主規制)・・・・。

 その武功で、勲章をもらってしまったがために、危険な現場に配備されていることがお父さんにバレ、「息子が死んだらどうしてくれるんだ!」と怒り狂ったお父さんの手配で、無理やり病気除隊の手続きをでっちあげられて帰宅。そのまま日本に送られて、ビジネス専門学校の学生になったんだとか・・・・。

 ふだんは、優しくて礼儀正しいビジネスマンの彼に、こんなわけのわからん経歴があったとは・・。
 他国で成功するような人ってのは、歩んできた人生の厚みや深さも違うのね・・と、彼への尊敬の気持ちがさらに高まると同時に、自分のぬるま湯さ加減を実感いたしました。

 いや。 これ ほんとの話ですからね。お話しの途中で具体的かつマニアックな質問をあれこれしてみましたけど、あきらかに使いこなしてる感がありましたし、敵を素手で○×▽□する(自主規制)方法なんかは、なるほど理にかなっていました。 ご無礼な若者くんたち、死と隣り合わせだったって事に気が付いてないだろうなぁ。 お~ こわ。

 ほんと びっくりぽんなお人でしたわ。

 見送りますからと言って、わざわざ反対方向のホームまでつきあってくれて、私の乗った電車が発車するまで手をふってくれてた、あのにこやかな人が・・・。家では優しいお父さんだって聞くし・・。

 翌朝、平和な日常にもどった私に、いかにもおだやかな話題が待っててくれました。

 写真は、ご存じピンセットでございます。

 関係ないですけど ピンセットって、オランダ語とかフランス語なんですってね。英語だとtweezers 。手術に使うピンセットはなぜかforcepsってカタログ表記され、日本語だと攝子(せっし)といいます。

 この写真のピンセット。カナちゃんのお父さんが、薬局でみつけて、思わず「これだ!!」と喜び勇んで買ってこられたものだそうです。

 何が 「これだ!!」 なのかというと、「これなら娘の喉に刺さった魚の骨が抜きやすいぞ!!」 ということなんですね。 わかります。その気持ち。

 ドラッグストアの棚にこのピンセットを見つけた瞬間の、小さくガッツポーズだったに違いないお父さんの背中からは、殺気とは対極にある感じの優しいオーラが出てたに違いありません。はじめて自転車に乗れた ちび・カナちゃんが、転ばないようにハラハラしながら見守ってた時のお父さんと同じ背中だったと思います。 今、そこの松の木で、サツキとメイが笑ったように見えたの・・・みたいな感じ。

 世のお父さんの背中からはいろんなものが出ますね。

 私も 背中から加齢臭とか出ないように気をつけないと。

 喉に魚の骨が刺さりやすい看護師は、元気に仕事をしています。今日は刺さってないみたいですね。よかったです。

    以上。三鷹・吉祥寺のペットドクター いのかしら公園動物病院の石橋でした。