2016.03.08

●ボランティア●

本日も お立ち寄りありがとうございます。

 今日は火曜日。皆さまご存知、休診日でございます。

 休診日とは言っても、アカプルコのビーチサイドで、あちらのお嬢さんに・・・ってパラソルのついたカクテルを注文したりしてるわけじゃぁありません。ちゃんと持ち場にて奮闘しておりますよ。

 今日の持ち場は、ニワトリ小屋。
 三鷹と国分寺の農協さんのお仕事で、近隣の農家さんを回って、ニワトリにワクチン接種をする日でございます。

 タイトルにボランティアと掲げておりますが、実費はもらっています。じゃぁ なんで恩着せがましくボランティアなどと書くのかというと、実態が限りなくボランティアだからです(笑) 

 それが証拠に、先代の担当獣医さんが亡くなって、農協さんが、あわてて近隣の動物病院に相談しまくったところ、そんな割のあわんことやってられっか と全て断られて、途方にくれた結果、めぐりめぐって私のところに依頼が来たという経緯があるのです。

 まぁね。ほかに獣医を雇っていない小さな動物病院としましてはですね。それこそ そんなことやってる暇はない! できれば心身を休めておきたい火曜日にわざわざやるこっちゃねぇ と断ってしまうべきだったんでしょうけどね。

 が・・・いまから30数年前。東京都知事に 大人になったらボランティアをする人になる と誓った経緯がありますのでね。割が合うか合わないかだけで決めちゃいかんのです。きっとあの日、太平洋に浮かぶ日本丸の甲板で同じ誓いをたてた仲間たちも、どこかの寒空の下で、歳甲斐もなく、一肌ぬいじゃってるに違いありません。

 それにね。農協さんとの間に入って私に連絡をくれたのが、東京都家畜保健衛生所の方なのです。その昔、高病原性鳥インフルエンザについて知識武装しようと思って、同所を訪問したところ、大変なお時間を割いて、完璧なレクチャーをしてくださいましてね。おかげで野鳥救護と鳥インフルエンザにまつわる私の不安や疑問が バキっ と解決したわけです。恩があるぞと。二つ返事でお引き受けした次第です。

 ただしまぁ・・なんというか。何事にもやってみないと見えてこない意義とういものがあるものでして。住宅街に残された農家さん(もともとこのあたりを開拓した功労者たちの末裔ですよね。地主さんたちって)の現状や、東京の農業についていろいろ勉強になりました。ワニとニワトリの往診する犬猫病院ってのもそうそうないだろうって、ネタにもなりますしね。

 日本の農家さんってのは偉いもんですよ。農林水産省ってのも偉い。こうやって、地道に食の安全を確保している方たちの努力の結果、日本では、高病原性鳥インフルエンザが早期に発見されて、すみやかに封じ込めできるんです。ウイルスが人に感染するチャンスもヒマも与えないんですね。

 海外のね。主として途上国あたりだとですね。ニワトリが禽舎で死にかけてるなんてのは当たり前だのクラッカーな光景で、誰も気にしない。なんなら死ぬまえに食べちゃおう。台所で解体しちゃおう。みたいなことになる。感染が成立するかしないかは運ですけど、とにかくウイルスには暴露されます。鳥型ウイルスが、人型ウイルスになるチャンスを与えてしまっているのです。
 日本だと、必ずいろんな病気の予防をしているから、ニワトリの様子がおかしいってのは 普通じゃない なんか特殊な病気が紛れ込んだかもしれない と認識され、きっちり向き合って対処がなされる。これは素晴らしいことなんです。

 病気予防のワクチンの接種は、必ずしも農家さんの経済性に貢献するわけでもなく、あくまでも社会への道義的責任というか、善意というか、好意でもって粛々とワクチン接種をしているわけです。 日本の農家さんは立派だと思います。

 まぁ、ここ数年は、ニワトリを飼育する農家さんもバタっと減ってきておりまして、接種件数も減少の一途をたどっています。住宅街にぽつんと農家があるわけですからね。ニワトリの騒音や匂いにまつわる苦情が農家さんに殺到するわけです。

 冷静に考えれば、農家さんが元から住んでた人で、私たちはあとから来た人たち・・・ なんですけどね。

 せっかくなので、次回もニワトリの話をふくらましてみましょう。題して、「卵かけご飯を科学する」 です。
 
  以上。三鷹・吉祥寺のペットドクター いのかしら公園動物病院の石橋でした。